過敏性腸症候群ってどんな病気?
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最近、自覚のない便秘症や過敏性腸症候群(IBS)の患者さまが増えています。日本人の10~20%がIBSに罹患しているといわれています。
私は超音波や肝臓が一番の専門ですが、便通の診療も多く行っています。便通の管理で最も大事なことは「自分の腸のことをよく知り、うまくコントロールする」だと思っています。
IBSは、繰り返す腹痛や腹部の不快感、下痢や便秘が慢性的に続く病気です。
IBSの原因はまだ完全に明らかにはなっていませんが「脳腸相関」の異常が重要視されています。不安や緊張、過労といった精神的・身体的ストレスが引き金となり、脳と腸の連携が乱れます。その結果、腸の運動に異常が生じたり、腸が痛みなどの刺激に対して知覚過敏になったりすると考えられています。さらに生まれつき腸内に常在している腸内細菌の種類と、それらが不規則な排便習慣と腸内環境の悪化によって悪い菌たちに変化してしまうことも原因となります。
週に1回以上の不快な腹部症状や下痢便秘に3ヶ月以上悩まされていればIBSの可能性が高く、大腸カメラでなにも異常がないことを確認して確定診断となります。
治療はまずは普段の習慣の改善が一番になります。
1.摂取するものを試行錯誤する
2.自律神経を整える
3.寛容になる
食事や飲み物の中で「これを食べる(飲む)と調子が悪くなる」というものはありませんか?牛乳を飲むとおなかを下す、ご飯よりもパンの方がお腹が張る…
その人その人で、好きと嫌いに関わらず、苦手な食べ物や摂りすぎると調子が悪くなる食べ物があるのです。
IBSの人が苦手とする食品に高FODMAP食があります。FODMAPはFermentable:発酵性、Oligosaccharides:オリゴ糖、Disaccharides:2糖類、Monosaccharides:単糖類、and、Polyols:ポリオールの頭文字になります(andってズルいですよね)。簡単にいうと消化に時間がかかり腸管で発酵しやすい食品です。
これらは消化に時間がかかるため、小腸に吸収する水分量を増やさなくてはならず、下痢になったりお腹が痛くなったりします。また大腸での発酵が進んだ結果、腸内環境を整え状態のいい便を作り出してくれる常在菌が減ってガスが作られるので、便秘になったりお腹が張ったりします。高FODMAP食には小麦、ライ麦、大麦、とうもろこし、玉ねぎ、にんにく、豆類、きのこ類、リンゴ、ナシ、桃、牛乳、プロセスチーズ、ソーセージ、ハムなどがあり、キムチや納豆、ヨーグルトなどの発酵食品もここに含まれます。
一方で発酵食品には腸内環境を整える作用もあるので、一概にIBSに良くないとは言い切れません。FODMAPだけに固執はせず、その人(の腸内環境や腸内細菌)に合う発酵食品があるので、実際に試してみて調子が整うものを見つける地道な努力が必要です。
消化管の運動は自律神経が支配しています。そのためストレスや不規則な生活によって自律神経が乱れると、おなかの調子も悪くなります。
質のいい睡眠を取る、3食バランスよく食べる、ゆっくりお風呂につかる、運動をするなどの基本的なことが、IBS症状を改善することにつながります。
実は心を広く、寛容になることも大事です!IBSは寿命や命に関わることは決してない病気です。気長に自分に合う生活や内服を見つけていけば、いつかはうまく付き合っていけるようになります。同じ程度の症状でもあまり気にしない人、とても気になる人がいます。ほかの原因が否定されてIBSと診断されていれば、少しすれば治るかな、食事に気を付ければ治るかな、焼肉食べてしまったからしかたないかな、などと切り替えて、おなかの症状以外のことにも目を向けることができると、気が楽になりストレスも減って、いい循環になります。
これらで不十分である場合は、症状を軽減するために、内服を処方します。内服はたくさんの種類がありますので、症状から目星をつけて、実際の効果や相性を見ながら調整していきます。いずれ日常の習慣が改善してくると、内服が不要になることもあります。
最後は、その生活、心がけ、そして内服を、ずっと継続することです。腸内環境は天候のようにいろいろな要因で毎日変わります。できるだけ変化を少なくすることが、IBSの方にとって大事だと思います。これが「自分の腸のことをよく知り、うまくコントロールする」ことだと考えています。
私ってもしかして便秘なの?IBS?と思った方は、いつでもご相談くださいね!!